トピックスNo.8で2007年の暖冬寡雪を憂う記事を書きました.
今回は,その後の状況について報告します.
2008年の冬はそれなりに雪が降り,極端に冷え込むこともなく,暖かくもなく
ということで氷がかなり発達しました.雪の状態が安定していたことも特徴的です.
しかし,2009年は暖冬で揺り戻しがありました.
今年は里では雪が極端に少ないが,高度をあげるとそれなりに雪があります.
そのため,氷の発達が著しいエリアがある反面,
雪不足,あるいは,降雪直後で雪崩の危険が高いエリアもあり,
地域と高度により雪や氷の状況が大きく異なることが特徴です.
谷川岳幽ノ沢中央壁付近を別の年にほぼ同じアングルで撮影した写真を
以下に示します.いずれも3月に撮影したものです.
2009年は,2007年と比べて壁に雪が着いていることがわかります.
やはり2007年は異常でした.
しかし,2003年はもっと雪がついています.2003年が異常ではありません.
私が谷川岳に足を運ぶようになった1987年ごろから2005年ごろまでは
ほぼこのような感じでした.
2007年からは少し持ち直した感じがしますが,5年から10年のスパンで
振り返ってみると,残念ながら,暖冬,寡雪に向かって単調に変化していることは
否定できないでしょう.今後は,このようなトレンドを受け入れたうえで,
新たなスタイルでの登攀や,別のエリアへの転進など考えていかねばと考えています.
2009年3月24日
過去のトピックス参照
2009年3月
2007年3月
2003年3月
以下では,2008年と2009年の壁の状態について,もう少し詳しく報告します.
■2008年2月の谷川岳一ノ倉 烏帽子奥壁
烏帽子奥壁大氷柱の取付 烏帽子奥壁 凹状ルートの1P目
この時期は氷がかなり発達しました.
雪が非常に安定していたのも特徴的です.
テールリッジに亀裂がなく,下から中央稜基部まで
普通に歩けたのは初めてです.
コンディションに恵まれ烏帽子大氷柱は登攀ラッシュでした.
私は凹状ルートに行きましたが,氷が少なく,上部は苦労しましたが,
雪は付いていて冬壁らしい登攀ができました.
烏帽子奥壁 凹状ルートの4P目
■2008年3月 谷川岳 一ノ倉 2ノ沢
2ノ沢 大滝付近 2ノ沢の抜け口
3月の2ノ沢は雪が非常に多かったです.
大滝はかなり埋まっていて,氷は発達し過ぎていたため
ロープなしで登れました.
抜け口は膝上までのラッセルと雪が多く,
日の出とともに気温がぐんぐん上がるなか,
急いで登りきりました.
東尾根に出てからは,きのこ雪に近い状態で
雪稜を楽しむことができました.
2008年は冬山が帰ってきた感じです.
2ノ沢から東尾根に入ったところ
■2009年3月 幽ノ沢
右股リンネ右稜を2007年と2009年で比較してみると,2009年の方が雪がしっかり付いています.
しかし,2009年でも「右股リンネ右稜3P目」の写真で分かるように,腐った雪でアックスを打ち込んで
快適に登れるような状態ではありません.
また,この日は晴天で朝日を浴びた中央壁では雪崩が頻繁におきていました.
前日に降雪があったこともあり,右股リンネでは,5分おきぐらいに大きな雪崩が常時出ていました.
V字の左,中央壁の右フェースでも何回も雪崩が起きていました.
左方ルンゼでもルンゼの中央を大きな雪崩が1回だけ出ました.もし,取り付いていたら絶望的でしょう.
気温の高さを肌で感じ,大雪崩の危険がしました.というか,常時,雪崩の中で行動している状況でした
水上に昼過ぎに戻ったときには,気温は17度まで上がっていました.
最後の写真は,一ノ倉沢出合の駐車場です.なんと,地面が見えていました.
一ノ倉沢も水面が出ています
これまででこんなことは一度もありませんでした.
やっぱり,最近の気象はおかしいですね.
2007年3月の右股リンネ右稜 2009年3月の右股リンネ右稜
2009年3月 右股リンネ右稜3P目 2009年3月 右股リンネ右稜3P目からの幽ノ沢
2009年3月 カールボーデンから 2008年3月での一ノ倉沢出合の駐車場
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