トピックス No.8

〜谷川岳冬期登攀の未来は?〜

 2007年3月4日に幽ノ沢に行ってきました.今シーズンの冬は暖冬と言われていますが,
谷川岳の状態も異常と言わざるを得ない状況です.
下の写真は幽ノ沢展望台付近から撮影したものです.

 この写真の右側にある石楠花尾根の雪はほとんどが落ちてしまい地肌が出ています.
例年は,右股リンネの上部にある大雪田に雪崩のプレッシャーを感じますますが,
その威圧感は影をひそめていました.中央壁の右フェースと正面フェース,左股の滝沢や3ルンゼには
雪が繋がっていますが,氷とは言えない様なしろものです.後述しますが,いつも発達している氷がないです.
 今回はカールボーデンを詰め,正面フェースの取り付き付近まで行きましたが,そこまで登るのに
アイゼンは不要で,残雪期の雪でした.それもそのはず,水上では6時の気温が5度,
最高気温は14時に記録した17.8度でした.
 谷川岳のこの時期は壁に大量の雪が付着し,氷も最も発達するのに,このような状態では
今後の冬期登攀が心配です.今はただ,10年後に今年が分岐点だったとはならずに,
今年はたまたま暖冬で仕方なかったと言えることを祈るばかりです.

 3月10日から11日にかけて新雪が積もったようですが,連続して冷え込まないとだめですね.
来年こそはいつも姿になることを願っています.

                                                 2007年3月12日 
                                                  過去のトピックス参照

谷川岳幽ノ沢

        V字状岩壁

 V字状岩壁や前衛フェースに雪がないのが特徴的です.
中央にある氷はV字の左ルートです.これではとても登れません.
 今回はこの写真のなかにある,あるルートに氷と雪のきれいな
ラインがあると期待して,アイスから岩の道具までフル装備で
行ったのですが,雪氷が全くなく門前払いでした.
 左側には右股リンネの右稜がありますが,現地で見ている
ときに雪が付着している状態を想像して登りたくなってきました.
今まで特に気になりませんでしたが,来年あたり登りたいと思います.







         中央壁


 中央にある雪のラインは正面フェースです.登れなくは無い状態ですが,
プロテクションはほとんど効かないと思います.
 中央付近に,左上ランペに向かって少しだけ氷が垂れていますが
これが左上ランペまで届くように発達しないと実践ダイレクトは
登れないでしょうね.過去に,左上ランペまであと3mぐらいのときが
ありましたが,ラインが読めずに敗退しています.正面フェース側に
かなり迂回すれば可能性ありそうです.
いずれにしても今回のような状態では・・・.






     中央壁を中心にズームアウト

 前の写真からズームアウトしたものです.
左端に中ルンゼの氷柱が見えています.
これでは全く迫力がないですが,本来の姿ではありません.
 
 このような状態では全景を眺めていても
新しい発想は出てこないですが,
右股リンネ右稜,実践ダイレクト,今回狙ったあるルート
の3本はぜひ登りたいです.









      左方ルンゼ

さすがに左方ルンゼは氷がありました.














 以上,具体的に見てきましたが,雪と氷がないと迫力がありません.
いつも威圧感をもってプレッシャーをかけてきた幽ノ沢らしさが感じられず非常に残念でした.
何か非常に大切なものを無くした様な感覚で,寂しい思いで帰ってきました.
来年は,いつもの元気な壁に会いたいものです.


トピックス一覧に戻る